専門医の医師が患者さんからよく受ける質問について答えるコーナーです。

A. 次のような「強いぜんそく発作のサイン」があった場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。

・唇や爪の色が白っぽい、もしくは青~紫色
・息を吸うときに小鼻が開く
・息を吸うときに、胸がベコベコへこむ
・脈がとても速い
・話すのが苦しい
・歩けない
・横になれない、眠れない
・過度に興奮する、暴れる
・ぼーっとしている(意識がはっきりしない)

また「強いぜんそく発作のサイン」がない軽~中程度の発作であっても、発作時に使用する発作治療薬(短時間作用性β2刺激剤)を吸入しても呼吸困難が残っている場合は、医療機関を受診しましょう。
家庭に発作治療薬がない場合は、医療機関を受診することをおすすめします。お子さんの症状に気づき、早めに受診することが大切です。

A. 秋から冬の間に流行するかぜの原因であるウィルスは、乳幼児期のお子さんのぜんそくを悪化させる場合があります。
かぜの予防には手洗いやうがいをすることが大切です。お子さんだけでなく、保護者や周囲の人もこまめなうがいや手洗いなどを心がけましょう。

A. インフルエンザウィルスは通常12月~3月に流行します。気管支喘息のあるお子さんは、喘息発作が重症化することがありますので、特にインフルエンザワクチンの接種をお勧めします。インフルエンザワクチンは生後6ヵ月から接種可能です。注意する副反応として、まれですが接種後に喘息発作が誘発されることがあります。体調の良い時期に、できるだけ12月までに接種を終わらせることが大切です。

【卵アレルギーがあるお子さん】

インフルエンザワクチンには、にわとりの卵を製造に用いている製品があります。卵アレルギーがあってもほとんど安全に接種できます。しかし、卵によるアナフィラキシーなど重症な症状があったお子さんで、インフルエンザワクチンを初めて接種される場合は、安全に接種できるかどうか、かかりつけの先生にご相談ください。

A. 天気によってぜんそく発作がおこることがあります。前日と比較して気温が3℃以上低下した日や過去5時間以内に3℃以上の気温低下があった場合に発作が起きやすいと言われています。

低気圧、特に台風が近づいて来て風が強くなってきたり、急な夕立、雷雨などのときにはぜんそく発作に注意してください。
また、梅雨の季節は湿気が多くなり、ダニやカビが最も繁殖する時期です。天候をみながら換気に気を付け、寝具や寝室の床の掃除をこまめにすると良いでしょう。

A. ランニング、サッカー、バスケットボールなど激しく走る運動や自転車を急いでこいだりすると起こるぜんそく発作を「運動誘発喘息(EIA*)」と言います。運動によって呼吸の回数と量が増えるため、血液の流れが増え、空気の通り道である気道の表面から水分が蒸発し気道が冷えるために起こる現象です。
EIAがある場合は、気道の過敏性が高いことを示します。EIA を予防するためには、運動前の十分な準備運動、マスクの着用、鼻呼吸、運動前に気管支拡張剤であるβ2刺激薬を吸入したりふだんから抗炎症薬(抗ロイコトリエン薬など)を服用し、ぜんそくが起きにくい状態にコントロールしておくことが大切です。
*EIA:exercise-induced asthma

A. 学校生活で発作の原因となるアレルゲンとしてほこりや動物が問題です。普段あまり使わない教室、ほこりっぽい倉庫、ウサギなどの動物飼育小屋は注意が必要です。掃除の時間にはほこりを吸い込まないようにマスクをつけると効果的です。出来れば、ふき掃除などのほこりが少ない役割にしてもらいましょう。また食物アレルギーが合併している子供では、給食や行事などの食べ物でぜんそく発作を起こす場合もあり、誤食を防ぐ注意が必要です。学校生活を安全で楽しく過ごすためには、血液検査(特異的IgE抗体)などであらかじめお子さんが何に対してぜんそく症状を起こすか知っておくと良いでしょう。小児科やアレルギー科の先生と相談しましょう。

A. お子さんの場合、気道の形や働きが十分に成長していないためにぜんそくのような症状が起きることもあり、年齢が小さくなるほど診断が難しい傾向があります。感染症でぜんそくのようになることもあります。アレルギー体質がある、ほこり、たばこ、気温の変化など、症状が起こりやすいタイミングがあるなどの日常生活の観察と、呼吸機能の検査や、似たような症状を起こす他の病気ではないことを確認するなど、複数の要素からぜんそくかどうかの診断をしていきます。
激しくせき込むことがある、息を吐くときにうなり声を出すなど、ぜんそくかどうか、疑問に感じることがあったら、まずは医師に相談しましょう。

A. こどものぜんそくは、成長に合わせて思春期頃までに完治するケースが多いですが、中には継続して治療が必要な場合や、大人になってから再び症状が出る場合もあります。完治とは、症状だけでなく気道の炎症がなくなることを指します。ぜんそくは気道の炎症が慢性的に続く病気のため、炎症を抑え、敏感になってしまった気管支を健康な人と同じ状態にもどす必要があり、それには時間がかかります。症状がなくなったからといって、自分で判断して治療をやめたり、減量したりすると、せっかく良くなっていた気道の炎症が悪化し、治療が振り出しに戻ってしまいます。症状がなくなっても、医師と相談しながら継続して治療を行い、ぜんそくの症状を上手にコントロールし続けることが大切です。

A. ぜんそくの発作がおさまっても、気道に炎症が残っていて、再び発作を起こす可能性があります。発作が起きないから、症状がなくなったからといって、自己判断でお薬をやめてしまうことは、おすすめできません。せっかく良くなっていた気道の炎症が悪化に向かい、大きな発作につながることがあります。

ぜんそくの治療は、どの強度の症状が、どのくらいの期間続くかによって重症度が判定され、重症度に対応した治療ステップを選択することにより、お薬の種類や分量が決定されます。 もし、一定の期間、症状が安定すれば、“ステップダウン”といってお薬の量や種類を減らしていくことができます。ただし、それには3ヵ月~6ヵ月間様子を見ることが必要です。

逆に、治療をしているのに、まだいくつかの症状が残っている場合には“ステップアップ”と言って、お薬の量を増やすなど、治療を強化する必要があります。
まずは医師と相談しながら、お薬による治療を続けて、症状がでない状態を継続させることを目指しましょう。

また、お子さんの場合、吸入薬が正しく使えているかが治療効果に影響するので、ご家族で確認するとともに、もし難しいようであれば補助具などの対策を医師や薬剤師に相談してください。

治療のステップダウン・ステップアップ

【ステップアップ】
治療をしているのに、まだいくつかの症状が残っている場合はコントロール不十分となり“ステップアップ”と言って、お薬の量を増やすなど、治療を強化する必要があります。

【ステップダウン】
3ヵ月~6ヵ月の間、症状がなければ、コントロール良好と考え、「ステップダウン」(お薬の量や種類を減らしていくこと)を考慮します

A. ぜんそくは、大きく分けて2つのタイプに分けられます。アレルギーが原因で起こるタイプと、それ以外が原因で起こるタイプです。小児ぜんそくのほとんどは、アレルギーが原因で起こるタイプだと言われています。

アレルギーの原因となるものは、主にダニやハウスダスト、カビ、ペットのフケなどがあります。これらをアレルゲンと言います。中でもチリダニは多くのぜんそく患者さんのアレルゲンとなっています。アレルゲンは、発作を誘発する主原因でもあります。家の中からアレルゲンを取り除くよう、掃除、洗濯、ふとんの手入れをしっかり行うとともに、空気の循環が良くなるよう家具の配置に気を使うなど、環境整備を心がけましょう。そのほかにも、規則正しい生活、バランスの良い食事、十分な睡眠、無理のない範囲での運動を心がけるとともに、風邪やインフルエンザなどの感染症にかからないよう、うがい、手洗い、マスク、予防接種なども行ってください。そのためにもお子さんとよく話し合って、注意しなければならないことを自分で避けることができるようにしてあげてください。また、ぜんそくの治療には時間がかかるので、定期的に受診し、医師の指示通りに治療を続けましょう。

A. まずは落ち着いて、子供に安心感を与えてあげてください。その上で発作の強度を見極め、発作の強度によって適切な対処をすることが重要です。どのお薬を使ったらいいか、お薬の正しい使い方や受診のタイミングなど、急な発作にそなえて普段からかかりつけの医師と相談しておきましょう。

【監修】 てらだアレルギーこどもクリニック 院長 寺田 明彦 先生